ブラックグリフィンの郵便屋さん⑨

2019年11月29日

 

このお話はDDONに出てくる敵ブラックグリフィンと少年を主体とした物語です!

ブラックグリフィンとはこんな魔物です ↓

これまでのお話がまだの方はこちらからどうぞ

 

やっと! 郵便屋さん要素が出てきました!(涙

 


リノ覚者になる

 

 硬い表情と眉間の皺を崩さず、とんでもないことをサラッと言ってのけたレオって男に、思考が停止して、また動き出す。
 そうして出た答えは、さっきのはきっと不器用な冗談なんだろう、ということ。
 だって、そうだろう。覚者?
 覚者っていうのは白竜に選ばれた人間がなるものだ。俺には心当たりが……。

 

その心臓を捧げよ

 

 ………そういえば。三途の川を流れる夢で、白い竜が、いた、ような。
 おそるおそる自分の左胸に手を当てた。耳をすませた。意識を集中させた。
 どれだけ左胸を意識しても、鼓動は感じなかった。
 そんなまさか。そういう顔をしていたのか、レオは若干眉間の皺を緩くして自分の胸を叩いた。「信じがたいか。無理もない話だが……確認してみろ。印がある」言われて、恐る恐る、病院着のような布服の胸元を引っぱって体を見てみる。
 自分の胸には、まるで火傷したような、憶えのない大きな傷があった。
 覚者の印。これが。
 あまりのショックによろけた俺をクリスの首が受け止めた。「ぐえ?」どうかしたのか、という顔でこっちを見ているクリスが、すぐ近くにいるのに、少しだけ遠くに見える。

(覚者? 俺が…?)

 覚者なんてもの、自分にはまったく関係のないモノだと思っていた。
 まだうまく現実が呑み込めない俺にレオが一つ吐息した。新人の扱いに慣れているのか、途方に暮れる俺を笑うでも怒るでも憐れむでもなく、吐息の一つで流してこう言う。

「お前に先輩を紹介しよう。覚者がなんたるかは、そいつから学ぶといい」

 

 レオとしては、その先輩覚者とやらを紹介するまでは俺と一緒にいるつもりだったのだろう。けど、自分を呼びに来た兵士の話を聞くなり『ファビオという先輩覚者が来るまで待機しているように』と言って、神殿に戻っていった。レオは多忙らしい。
いかにもリーダーっぽいというか、そういう感じの真面目さがあったし。忙しいのだろう。
 クリスが追い払ったことでゴブリンのいなくなった、かつては何かの建物だったのだろう、石造りの壁を背に座り込む。「…あ」ベッドから飛び起きて慌ててここまで来たせいで、靴を履いてなかった。どおりで足の裏が痛いわけだ。ちょっと血がにじんでる。
 胡坐をかいて座り込んだ俺の横に、クリスが行儀よくお座りした。俺以外に誰もいなくなってようやく気が緩んだらしく、大きく口を開けてあくびをしている。

「なぁ。覚者だって。俺がさ」
「ぐえ?」
「もう人間じゃないんだって」
「グゥ?」
「…わかんないか」

 首を傾け続けるクリスの黒い体毛に顔を埋める。
 スフィンクスとの戦いのあと、水浴びもしてないから、ちょっと獣臭いな。川に連れていってやらないと。
 それにしても、覚者かぁ。
 人並みの幸せな人生は送れていなかったけど、取り立てて不幸ってわけでもないし、だったらせいぜい幸せ目指して生きていこう…って感じだったんだけどな。そんな俺がまさか覚者だなんて。
 ぐりぐりと頭を押し付けてくるクリスに、ああ、でもそれでよかったのかもしれない、とふと思う。
 これで、俺がこの子供を置いて逝くことはなくなった。寂しい思いをさせることはなくなった。それはクリスにとってはきっと幸福なことだ。
 そのまま、人生とか、クリスの未来とか、ぼんやりととりとめのないことを考えていると…遠くから「おーい」と呼び声が聞こえてきた。顔を向けると、神殿の入り口辺りに誰かが立っている。「おーい。リノってのはあんたかー?」ぶんぶん手を振っている相手に片手を挙げて返す。あの人がレオの言ってたファビオ、だろうか。
 ヒョイヒョイとした軽い足取りで歩いてきたファビオは、なんだかノリが軽そうな男だった。「よっ」「…どうも」軽い挨拶に、とりあえず頭を下げて返す。
 ファビオはしげしげと俺を眺めたあと、同じようにしげしげとクリスのことを眺めた。「へーえ。ほーお。フーン」「…? あの……」それでなぜか手巻きのメジャーを取り出して、クリスの背中とかを測り始める。…なんだ、この人。
 耳を伏せたクリスが嫌がって俺の後ろに隠れた。大きくなったクリスは背中に隠しきれないけど、俺がファビオとの間に入って壁になることはできる。

「嫌がってるんで、やめてあげてください」

 懲りずにメジャー片手に追いかけようとするから、仕方なく声をかけた。「お、悪い。コイツまだ小さいんだな?」メジャーをポケットに突っ込みながらファビオはまだクリスを見ている。「クリスです。まだ子供なんで…」「ふむ。クリスね」その手にメジャーはなくなったものの、クリスはまだファビオを遠巻きに見ている。
 ……このままこの人のペースに合わせてると、いつまでたっても本題には入れなさそうだ。俺から言おうか。

「レオに、ファビオって先輩覚者を待つように、って言われてるんですけど」
「おう。そのファビオは俺のことだ」

 自分を指してウインクしてくるファビオ。…ちょっと頬が引くついてしまった。チェスターよりも軽いぞ、この人。「先輩、覚者、ですか?」「見えないって? まーそうだろうなぁ。俺はレオとは違うからなぁ」どうやら自分が覚者っぽくないって自覚はあるようだ。「…あの人、やっぱりすごい人なんですか?」レオの眉間に皺を刻んだ顔を思い出す。いかにも出来る、って感じだった。
 ファビオは肩を竦めて「白竜の次期後継者。白翼覚者隊の隊長。通称、統率。人望もリーダーシップもあれば、戦っても強い。レオは覚者の見本みたいなヤツだよ」まるで絵に描いたみたいな人だ。
 そんなレオが、軽いファビオに俺を任せたのはなぜだろうか。
 考えていると、ファビオがまたしげしげとクリスを眺めた。「うーん。まぁいいか。よしリノ、話がある」「…はぁ」ちょっと座れ、と地面を叩かれて、仕方なく腰を下ろした。ようやく覚者の先輩らしい話が聞けるんだろうか。
 ファビオもドサッと座り込むと、腰のベルトにあるポーチをあさって紙片を取り出した。中身は…覚者の心得、ではない。何度も折りたたまれた形跡のある、何かのリストだ。『革のブレスレット』『ファングピアス』…アクセサリーだろうか。斜線を引っ張って消してある。

「これ、ウチの商品リスト」
「は? 商品…?」
「酒場を中心に商売してるんだよ。神殿が一番人が集まるから、拠点にするにはちょうどいいんだ」
「…それ、覚者のする仕事ですか……?」

 ふわっとしたイメージだけど、覚者ってのは白竜のためにあくせく働くんだろうと思っていた。それこそ、レオみたいに。
いろんな意味でショックを受けている俺の肩をファビオが叩いてくる。「オタク、覚者になろうと思ってなったんじゃないんだろ? 気づけばなってた、ってヤツじゃないか?」「…そう、ですね」「ってことは、覚者がなんたるか、ってのもぼんやりとしかわからない。だろ?」「…はい」確かに、そのとおりではあるけど。
 ファビオはニヤリとした笑みを浮かべてこう言う。

「不可抗力とはいえ、覚者になっちまった。だが、それがどんなモノか、まだよくわからない。
ってことは、あんたはまず『覚者』を知らないとならない。そして、自分がどういう覚者になるかを決める。
目標もないままフラフラするってのも辛いぜ。だから、それまで俺と一緒に仕事して、自分の覚者像を探すってのはどうよ」
「…………」

 ファビオの言葉にも一理はあるだろう。
 俺は確かに『覚者』がどんなものかを知らず、ぼんやりとしたイメージしかもっていない。そのイメージでこれから覚者をやっていくんだと言われても…道に迷ってしまう、気がする。
 ファビオって先輩覚者と一緒に、他の覚者の仕事ぶりを見て、自分の今後の参考にする…っていうのは、充分アリな話か。仕事内容によるけど。クリスを見世物にするようなことなら断る。
 考えが顔に出てたのか、ファビオは俺とクリスに任せたいのだという仕事の話を始めた。
 それは、簡単に言うと、『郵便屋』であり、『配達屋』だった。

 

 


 

 

ようやく! ようやく!! 郵便屋さんの文字を出すことができました…(´;ω;`)
ここまでが長かったというか長すぎた気がするのです…

そうこうしているうちにドドンのサービス終了まで残り一週間となってしまいました。。
なんとかキレイにまとまるように頑張ろうと思います( ノД`)

 

 

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