ブラックグリフィンの郵便屋さん⑩

 

このお話はDDONに出てくる敵ブラックグリフィンと少年を主体とした物語です!

ブラックグリフィンとはこんな魔物です ↓

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不可抗力で覚者になってしまったリノは、先輩覚者ファビオのもとで『覚者とは』を学びつつ、自分の覚者像を探す日々です( ˘ω˘ )

 


まんざらでもない日々

 

 ファビオ曰く、覚者とは、白竜と人とを繋ぐ架け橋、らしい。

「そもそもだよ。お前、どこの誰かも知らない覚者が『世界と白竜のために頑張ってます!』って言われて、尊敬とかできる? そのために血税払えるか?」
「…微妙なところですね」
「そ。神殿はさ、謁見する機会がないとはいえ白竜がいるし、レオやイリスみたいな覚者も出入りしてるから、覚者ってモンを否定するヤツはいない。
 でもな、一歩外に出てみろよ。この辺りはまだいいが、神殿から離れれば離れるほど、覚者なんて眉唾もんだ、って顔するヤツは多くなる。
 俺はさ、『お前は白竜の剣と盾でしかない』って顔される、覚者が生きづらいのはヤなんだよね。
 そんで考えたわけ。
 覚者らしさをアピールしながらも、人と人とを繋いで、覚者も生きてるんだぜって示す方法を」
「それが商売だ、と」
「商品の売買だけじゃない。普通の商人じゃ行き来が難しい土地や、仕入れるのに苦労するブツを代わりに配達したり仕入れたりする。
 よーするにさ、戦うだけが覚者じゃないって生き方を示したいわけ。
 そうしたら俺もー、お前も、ちょっと生きやすい世界になるじゃん?」
「はぁ、そうですね。…飲みすぎですよ」

 ワインのボトルを空にしたファビオがさらに追加でオーダーしようとする手を叩き落として止めた。
 飲むと饒舌になるらしいファビオはご機嫌だ。さっきから何度も聞いた話を聞かされて耳にタコができてきた。そろそろクリスのところに戻りたい…。
 夜の酒場は市民兵士覚者が入り混じってあちこちのテーブルが盛り上がっていて、長年静かに暮らしてきた俺にはうるさいくらいだ。
 ファビオの前によそったスパゲッティの皿をドンと置く。放っとくと酒ばかり飲むから。「冷めます。食べてください」「おー」ヒック、としゃっくりを繰り返すファビオはただの酔っぱらいだ。…とても先輩覚者には見えない。
 それでも、耳にタコができるくらいに聞いた商売についての姿勢の話は、まぁ、納得はできる。ファビオなりに覚者の道を模索してるんだろうってことは。
 ずるずるとすするようにスパゲッティを食べ始めたファビオを横目に席を立つ。

「ごちそうさまでした」
「あ? もういいのか?」
「市が閉まる前に寄って、クリスに魚を買って帰ります」

 あー、とぼやいたファビオがずるずるとスパゲッティをすする。「マメだなぁ。子供って言ったって、自分で狩りできるだろうに」「……留守番させてますからね」手土産の一つでもないと、器用に頬を膨らませるはずだ。最近は仕事も増えたし、立派な大人になるためにも、クリスにはたくさん食べてもらわないと。
 喧噪で溢れる酒場を逃げるように抜け出して、商店区の方に足を伸ばす。
 もう店じまいをしている店もあれば、かろうじて開いている店もあり、中には生鮮食品だからと値下げして売っているバザーもある。
 そういったお得に買い物できる店から生ものやら野菜やら残り品やらを買い占め、布の鞄をいっぱいにして、神殿の中央広場を通り過ぎ、大門から夜に沈む街の外へ。

「お疲れさまです」
「おお、お疲れ」

 今日の門番の人に軽く頭を下げて挨拶し、神殿の入り口から見えている廃墟跡…今は掘っ立て小屋とクリスの寝屋がある場所に向かって速足で坂道を下っていく。
 グリフィンであるクリスが神殿に滞在することは、ファビオがどんなに交渉しても許可が出なかった。とくに反対したのはジョゼフという頑固そうな爺さんで、神聖なる神殿に魔物を入れることはうんぬんかんぬんとうるさく、梃子でも動かない感じだった。
 そこで、レオが機転を利かせて、クリスを番犬ならぬ番獣として神殿の外に配置することを提案した。
 実際、クリスは自主的にゴブリンを追い払っていたし、クリスがいればこの辺りの魔物は寄ってこないので、役割としては打ってつけだった。
 場所は、神殿から目と鼻の先。かつて建物があったという廃墟跡。
 レオの提案にファビオが同意し、イリスという同い年くらいの女覚者もうんうんと頷いて、ジョゼフ爺さんは覚者勢に押し切られる感じで渋々クリスと俺が神殿前に居を構えることを良しとした。
 そうと決まってからのファビオの行動は早かった。
 ファビオがあちこちに声をかけてくれて、急ごしらえではあるけど雨風をしのげる小屋を作ってくれた。
 先輩覚者としてはどうかな、と思うこともあるけど、顔も広く面倒見がいいファビオには感謝している。
 出ていくときにかがり火に火を入れてきたから、小屋からぬうっと伸びた黒いものがクリスの首であることがかろうじて見える。俺の足音で帰ってきたのがわかったらしい。

「グエ!」

 俺がいるとわかると小屋からドタドタと出てきて駆け寄ってくる。「ただいま」相変わらず押し付けてくる頭を押し返しつつ、鞄の中の生魚を掴んで引っ張り出す。

「ほら、お土産」
「!」

 いい子で待っていたご褒美は、クリスの口の中にあっという間に消えていった。…結構大きい魚だったんだけど。クリスの口だと一発か。
 ペロリと魚を平らげたクリスは若干物足りなそうな顔をして嘴で鞄をつついた。「これはダメ」「ぐぅ…」「明日川へ行こう。面倒なリザードマンを退治してくれって依頼も来てるし、そこで好きなだけ食べなさい」掘っ立て小屋のガタつく扉を押し開けて中に入り、廃材で作ったテーブルに鞄を置く。クリスはこっちの小屋には大きさ的に入れないから、顔だけ覗かせて、まだ鞄を見ている…。
 鍵なんて意味がないようなガタつく扉に、廃材のリサイクルのテーブル、チェア。ベッドだけは『睡眠は覚者にも必要だぞ』って新品を買ってくれたけど、この小屋の中で価値があるものはそれくらいだ。盗られて困るものもそうない。

(これで覚者になって半月、か。…覚者って思ったほど便利じゃないんだな。
死なないけど、食べたり寝たりした方が調子がいいし、人間的な営みを排除できるわけじゃないんだ……)

 欠伸をこぼしてベッドに転がった俺に、クリスは諦めずにじっと鞄を見ていたけど、俺が動かないとみるとシュンと耳を下げてのそのそ自分の小屋に戻っていった。
 あんまり甘やかしてると一人立ちできないぞ、とファビオに指摘されて、最近は別々に寝るようにしてるし、前ほどべったりではなくなったはずだけど。どうも慣れないなぁ。俺も、クリスも。
 とにかく。明日は戦闘面での仕事だ。神殿から依頼のあったものだし、退治したリザードマンの皮の調達と配達も頼まれてる。きっちりやらないと。
 明日のことを頭の中で段取りしながらうとうとしていると、カリカリと小さな音が聞こえてきた。…爪で何かを引っかく音だ。
 捨てられるところをもらってきた毛布を引きずって隣の小屋に行くと、耳を下げてしょげていたクリスがぴょこんと顔を上げた。「…一人でも寝ろよ」結局、甘い俺は、毛布にくるまってクリスのお腹を枕に寝るわけだが。
 クリスは満足そうな顔で俺を囲うように丸くなって、静かになる。

(……いつかお前も。恋をして、どこかのグリフィンと夫婦になって、子供を作って、育てるんだろうか)

 この甘えん坊に、そんなことができるとも思えないけど。想像するだけでモヤモヤする…。
 ひょっとしたら、一人立ちが必要なのは、俺の方なのかもしれないなぁ。

 


 

急ピッチで執筆しています、アリスです(;´・ω・) 残り時間は少ないぜ…!

今回は、覚者になったリノの神殿暮らしを書きました
町や村を転々として生き、クリスを拾ってからは人里離れた場所でひっそりとした暮らしをしていたので、彼にしては人間らしい、上々の暮らしです
普通の討伐依頼もあれば、調達依頼もあり、ファビオから商品の配達を頼まれたりもする、充実した日々を過ごしております( ˘ω˘ )

小ネタ

クリス達が掘っ立て小屋で暮らしている場所はココ。神殿から出て坂を下ったすぐの場所にある廃墟です

ここを再利用する形で掘っ立て小屋を建てて暮らしています
クリスは番犬ならぬ番獣! ゴブリンは怖くて寄ってきません

さて、またキビキビ書かねばですね。郵便配達してるところを書かねば…!

 

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